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酒場『キタアリリ』の中は、未だ日の沈まぬ時間にしては随分と賑わっていた。港町の酒場、しかもバザーの真っ只中とくれば、むしろ賑わってない方がおかしいのかもしれないが。 店内を見回しても、これといって目立つ客もいない。つまりモブばかりだ。キタアリリには二階席も存在するのだが、そこは現在貸し切りになっていて、一階からは様子を窺うことはできない。 彼は店内に足を踏み入れると、早速カウンターを仕切るマスターへと声をかけた。 「聞きたいことがあるんですが」 「なんだい」 ワイシャツに黒のチョッキといかにもな格好の『酒場のマスター』は、片手間に磨いていたグラスを置くと、声をかけてきた青年の方へと顔を向ける。 「酒場では、仕事の依頼などを受けたりしていますよね?もし仕事があるなら、紹介してほしいのですが」
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