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しかし、そう言われたところで彼は引くことなどできない。あまり時間に余裕もないし、仕事を選り好みして失敗など言語道断である。 「それでもいいなら…」 「お願いします」 間髪入れずに答えられ、マスターは思わずたじろぐ。そんなマスターに構うこともなく、彼は仕事のさらに詳しい内容を催促する。 「それじゃあ…」 マスターが話を続けようとしたその瞬間、二階席が慌ただしくなったかと思うと、幼さの残る高めの声が降ってきた。 「そこから先は私が説明するのです!」 思わず顔を上げた彼の視界に、今まさに二階席から飛び降りようとする人影が映る。その影は勢いよく跳ねると、マスターと彼が挟むカウンターに着地した。カウンターに置かれていた色とりどりのアルコールは軒並み倒れ、グラスの割れる音が幾重にも重なり店内に響きわたる。 不思議と誰も驚かない。 「はじめまーして雑務クン」
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