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見紛うわけがない。あの青年が間違いなく『主人公』だ。彼や他のモブとは一線を画す奇抜な服。美しい顔立ち。炎を思わせる異色の髪。それら全てがアイデンティティであり、彼一人の特権だった。 「貴様のような下賤な者が、我ら対魔騎士に楯突くとは。身の程を知れ!」 そう言って、三人の騎士が主人公へと刃を振り下ろす。騎士などと宣っておいて、三対一という下劣極まりない戦法をとる卑怯者共の剣を軽く去なし、まるで踊るように主人公はたち回る。鋼と鋼の重なる先から火花が飛び、至近距離でその閃光を浴びる。けれど止まらない、怯まない。 炎色の髪が一瞬目にも止まらぬ早さで動いたかと思うと、べきん、と嫌な音を立てて、そして勝敗は決する。 「き、貴様ァ」 対魔騎士の三人は、自らの持つ折られた剣と主人公を交互に見やり、 「覚えておけ!!」 と正に三流な捨て台詞を吐いて、人混みの中に消えた。
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