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「こっちだ!」 彼は声を張り上げて、人通りの少ない裏路地を指し示す。主人公と少女はそちらに顔を向け、彼の下へと駆け寄ってきた。 「この道に入って住宅街に抜けるんだ。騎士の方はうまく巻いておくから」 迷っている時間もないだろう、主人公は軽く頭を下げ、少女を連れて路地へと駆け込む。 「誰だか知らないがすまねぇ、恩に着る!」 主人公の言葉を聞き終えると、今度は真逆の路地を指し示し、 「赤い髪の男がこっちに逃げましたよ!」 と。これで彼の仕事は終わり。騎士はなんの疑いも持たぬままに、駆け足で不正解の道へと突き進んでいく。彼はその後ろ姿が見えなくなるまで見つめた後、小さく伸びをして、彼が最初にいた港へと歩を進める。 とりあえずはこれでいい。ほんの一瞬ではあるものの、主人公との接触を計ることができた。この一瞬が、この先必ず生きてくるはずだから。彼はほんの僅かに微笑んで、この先の事に思考を巡らせる。
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