700人が本棚に入れています
本棚に追加
「今回の小テストで出た所は中間テストでも出るかもしれないから、しっかりと復習しておいてね」
「具体的にはどんな問題が出ますかー?」
「教える訳ないでしょう。はい、今日はここまで」
生徒の軽口に笑いながら答えると、さくらは授業を終わらせ教室を出て行った。
胸中は未だに穏やかではない。
今回の小テストで彼の答案があった。
自分は絶対に採点していない。
でも筆跡は間違いなく私。
(どうなってるの…!?)
遠野 空
今まで、昨日までいなかった男の子。
彼は誰? 何者?何故私だけ彼を知らないの?
思考は止まる事なくさくらの脳内を巡り、何とも言えぬ恐怖が心を支配する。
(…なんか怖いよ、優也…)
不安から思わず恋人の名を呼ぶさくら。
他校で同じ高校教師として働く9歳年上の恋人・長谷川優也(はせがわ ゆうや)。
彼に相談してみようかと携帯を開こうとしたさくらだったが、馬鹿馬鹿しくて信じてくれないだろうと、ため息を吐いて携帯をしまった。
最初のコメントを投稿しよう!