1,泣き方を忘れて

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叔母には子供がいる、それも柳と同じ歳の。そして同じ学校であり自分はとても嫌だった。 正吾(ショウゴ)は頭が良い、勉強だって出来る。しかし柳を一度も負かしたことがない、そのことを妬んでいるのだ。 「正ちゃんは良い子なのにどうして……」 アンタに勝てないのかしら、と続く言葉を慌てて呑み込む彼女は悔しいと思っている。中性的な顔をする自分は男女問わず自慢ではないがモテる、だが正吾は性格が悪いと評判だが叔母は知らない。知るわけがないのだ。 「―――もう部屋に戻ってもいいですか」 彼女や正吾を家族だと思ったことなんて一度もない、まずたらい回しにするような人を家族だと思える程自分はお人好しではないから。 だからこそ、努力した。 人の何倍も努力して、早くこの家を、親戚中の人間から離れたかった。 「後で夕飯の手伝いにきなさい」 「はい」 「おい、」
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