2,暗転

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「お前のお友達はここにいるぜ?」 正吾は窓に近寄り何かを人差し指でつついている。クマのぬいぐるみ―――ジュリアだ。 いきなり窓を開けた彼が次に何をしようとしているかなんて明確だ、ジュリアを落とそうとしているに決まっている。窓の外は道路だ、ここは住宅街だが引っ越しやらで入れ換わり立ち代わりで近所の人しか把握していない。 つまり、引っ越しのためのトラックがよく走っている、ということ。 道路に落とされてしまったら人溜まりもない。 「、……やめ―――っ!」 「ぐっばい!」 トン、と人差し指で押せばぬいぐるみのジュリアはゆっくりと後ろへ落ちた。 黒のつぶらな瞳がこちらを向いて聞こえてくるはずもない声が聞こえる。 『たすけて、』 と。
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