もう君を愛せない

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この曲を覚えているだろうか?懐かしいギターの音色が誰もいない静かな海に透きとおって響く… 夜の闇に、その音色は儚くも力強く語りかけるようにあの日の二人をそこに映しだす。 この海岸は人工島で、白い小さなチャペルが見える。それを目当てに恋人達は集り、二人の将来を夢見て肩をよせ、二人の時間を心に焼き付けるのだ。 今、僕の隣には君がいる。まるで、干からびた大地から一輪だけ咲く花のように僕の心を暖めてくれる君。時計の針が二人の時間を引き裂いてゆく。 『時間が来るね。そろそろ送って欲しいなぁ』と君が口にする。『送るよ。乗って。』と言い、彼女にスっとヘルメットを差し出した。バイクにまたがり、僕の身体にしがみついた彼女の抱きしめる力が、本当はまだ帰りたくないことを僕に無言で知らせる。僕はそれに気づかないフリをして、彼女の家へとバイクを走らせた。
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