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「どうしてですか?」
「どうしてって」
おかしい。続きが出てこない。私はどうして椎名君を拒絶しているんだろう?
「ガキだからですか?」
違う。年齢なんて気にならない。首を振って否定する。
「タイプじゃないとかですか?」
違う。容姿なんてどうでもいい。首を振って否定する。
「俺といてもつまらないとかですか?」
違う。少なくてもこの数日私は楽しかった。首を振って否定する。
――楽しかった?
そうか、そうかもしれない。椎名君と話をしていると楽しかったかもしれない。たしかに、今まで得られなかった充実感を得られた。
「じゃあ、なんでですか?」
そんなの、私が知りたい。
自分がわからない。どうして椎名君を拒絶しているんだろう。彼は今までの男性諸兄とは違う、そんな事はわかっている。
「あの、早路さん?」
言われてから気付いた。熱を帯びた頬を冷ます一筋の濡れ後に。私は、なんで泣いているんだろう。本当にわからない。でもきっと、
「椎名君のせいだ」
「えっと、ごめんなさい。……それと、ごめんなさい」
謝られてもどうしていいかなんかわからない。それに、どうして二回も謝ったの? しかし答えはすぐにわかった。
彼の乾いた唇が、私の唇に触れていた。火傷するんじゃないかってくらい熱く感じたけど、その熱を否定出来なかった。否定する理由もなかった。
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