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取り付く島がないと理解したのか、彼は一度笑顔を見せてから経理課から出て行った。きっと心中では舌打ちをしているんでしょうね。
お局とまで呼ばれる今、若い男性に媚を売ろうなんて思わない。小娘だった頃なら多少なりと期待したかもしれないけど、今はそんな誘いに乗らないのがある種プライドとなってきている。
私と彼のやりとりを見ていた若い女の子達がひそひそ話をしているが、それも既に見慣れている。
別に社内で友人を作る気もない。私は仕事をしに来ているんだ。同期が寿退社していくのを見てても素直に「おめでとう」と言える。羨ましくなんかないから。仕事が出来てお給料をもらえれば私はそれでいい。
結婚して子供を産むのが女の幸せだなんて誰が言い始めたんだろう。私は今、十分幸せだ。家に帰ってお気に入りの映画やアニメを見たり、好きな作家の本を読んだり、それが出来るだけの収入があるんだから別にいい。生まれてこの方彼氏がいない事も処女のまま死ぬのも、些細な事だ。
男と関わるのなんか、面倒なだけ。
小娘の頃は発育の遅い胸も、むくんだ足も、寸胴鍋のようなお腹も嫌いだった。皮肉な事に、年齢を重ねてそういう悩みの無い体つきになった頃には恋愛に興味が無くなっていた。
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