追憶と…

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朝、目が覚めるとやっぱりそこに君がいた。 ボクはまだ眠いんだけど、もう学校だし、目を擦って伸びをした。 「おはよう。」 「んー、おはよー。」 君の挨拶に寝ぼけ声で答えるボク。 君は笑みを溢す。こうなると、やっぱりいつも通りに頬を膨らませて抗議するしか無くなるのがボクという人物であって、それを見てクスクス笑っている君はボクの弱点を知り尽くしているイジワルな幼馴染みだったりする。 「本当に可愛いよね。なんで男の子なんだろ」 「うるさい。」 これももうお決まりの朝の挨拶であって。 そりゃあちょっと不機嫌にはなるけど。 よくも悪くもいつも通りだった。 ずっと続いてきたことだった。 「ねぇ」 「うん?」 通学途中、ボクと君は並んで歩く。 行きは右で帰りは左。ボクが車道側を歩く。 だから今は右側。 「好きな人とかいないの?」 「どうしたのよ、急に」 ボクは、ボクとずっと一緒にいる君のことを気遣っているんだけど、ということを頑張って伝えてみる。 「あんたまだそんな事言ってるの?」 「だって…、ずっと一緒だし…」 「気にしないわよ。少くともアタシは」 「でも、ボクの独り暮らしは家の事情なんだし、無理に合わせなくても……」 「そんなの今更でしょ?大体、一人で起きるのがやっとのくせに」 「うっ」 「ほらね」 おっしゃる通りです。 早くに、と言うか五歳の頃に両親を亡くしたボクは、独り暮らし中。 一応形だけ引き取ってくれた親戚は、毎月お金だけをくれている。 引き取ってなんかくれなかったし、ボクも引き取ってくれるとは思ってなかった。 だってボクは疫病神だから。
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