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突然ですが、主人公は死にました。
…なんて、書き出しの小説を僕は読んだ事がある。
しかし、現実世界で主人公が死んだりしたら、それこそ転生だとかソンビだとか、幽霊にでもならない限りは物語は進まないワケで……
当然、そんな能力に恵まれない僕は、ちゃんと生きているワケです。
「…死にてぇ…」
僕は、やけに重く感じる自転車のペダルを必死に踏み込みながら、ポツリと、そう呟いた。
高速道路のド真ん中を、僕は失速転倒ギリギリの速度でユラユラと進んでいく。
頭上には真夏の太陽がドヤ顔で光り輝くシャイニングスマイル(太陽光線)を放出しており、小学校の激熱系熱血教師なら「みんな見ろよっ!!太陽が笑ってるぜ!!どうだ!?太陽は気持ちいいだろう!!ハッハッハッ」とか言いそうだ。
しかしながら、結果的に太陽は僕を苦しめているだけで、そのシャイニングスマイルは灼熱地獄となって、僕を焼く。
「…死にてぇ…」もう一度呟く。
あぁ、頭に血が昇る。
寝転んだら丸焼けになりそうな舗装道路から、俯いていた視線を上げ、前を見る。
見渡す限り、動いているモノは何もない。
あるものと言えば、永遠と延びる高速道路に、乗り捨てられた自動車達の骸と静まり返った夏の蒼空。
そして、忌々しくギラギラやってる太陽さん。
高速道路脇のポツリポツリとビルが建つ街中にも、動く影はない。
それでも、ビルだけは虎の威を借っているようで、ジャイアンの権力を盾にしてるスネ夫よろしく、太陽光線をギンギラギンギンに反射している。
そして、なすすべも無く、太陽(ジャイアン)とビル(スネ夫)に、メラメラやられてるのは僕。
断っておくが、僕の名前は断じて、のび太ではない。
秋山 春人(アキヤマ ハルヒト)というちゃんとした名前がある。
しかし、まぁ……のび太だな…この状況は。
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