序章《プロローグ》

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お尻の下のドラえもん(自転車)は、ガシャガシャ言ってるだけで、助けてくれない。 そうなると、残るは… 「じゃあ、死ねば?」 僕の背後から辛辣な意見が飛んできた。 「しずかちゃんは…そんな事、言いませんよ…真冬先輩…」 「何、言ってんのハルヒト君?熱中症?」 「そうかも…」 僕はフヘヘ、と笑う。 うっ…背後からキモって言葉が飛んできたよ。 あなたは、この光景を見てどう、感じるだろうか? 僕の背後、自転車の荷台に女の子が座っていて、その手をしっかりと僕の腰に回し、僕の背中に、これでもかってくらいのハグ。 ……リア充くたばれって声が聞こえてきそうだ。 夏川 真冬(ナツカワ マフユ)。それが背後の女の子の名前。 少し、茶色がかった長い髪に、日本人らしからぬ、西洋人形のような可憐な顔立ち。大洋のような碧眼。文句無しの美少女。どこかとのクォーターだと聞いている。 身長はそれほど高くないが、スタイルは良く、育つべき所はちゃんと育っているな…と背後の圧迫感から判断。 成績優秀、校内テストでは常にトップ。全国模試でだって、毎回、上20人に食い込んでいる。そして、高校三年生の彼女は僕の先輩であり、僕らの高校の生徒会長……だった。そう、過去形だ。 そんな、一度みたら忘れられない凄絶な美貌の才女である真冬先輩と、同窓会でクラスメートにすら忘れられそうなフツーの高校二年生の僕が学校を離れて、旅に出てから早、8日目。
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