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真冬先輩は話し終えてから、ゆっくりとした動きで僕を見た。
「これが私達『血族』に代々言い伝えられてきた歴史、そしてこの星の本当の歴史」
真冬先輩は静かにそう言った。
僕は何も言わなかった。いや……言えなかったのだと思う。
今の学会をひっくり返せる位の話だ。にわかに信じがたい。しかし本当の話なんだろう、と直感的に確信する。
でも、一つだけ。
今の話に真冬先輩が本当に、本当に哀しげな眼を、表情をする理由があったか?
「言い伝えはここまでだけど……この話には続きがあるの」
真冬先輩は言った。どこか先ほどと違い苦しそうに。
「ヒトラー……って、知ってるよね?」
真冬先輩は訊いた。
「は……はい……あれっスよね?ナチスドイツの独裁者の……」
僕はよく分からず、答える。
ヒトラーと言えば、第二次世界対戦でナチスを率いてドイツをファシズムに導いた独裁者で、ユダヤ人を虐殺した大戦犯だと学校で習った気がする。
「でも……なぜにヒトラーなんスか……?」
「それはね……」
真冬先輩は一瞬、間を置いてから繋げた。
「ヒトラーが『血族』だったから」
ヒトラーが『血族』?確かに驚くべきことだが、質問の答えになっていないことに気付く。
「知っての通り、ヒトラーは世界征服をもくろんでいた」
真冬先輩は続ける。
「そこで彼が彼が考えたのは『血族』の人数を減らすことで『カルマ』によって保たれていた世界の重力を逆転させること」
「それって……まさか」
ある言葉が脳裏に浮かぶ。
「そう……当時、ヨーロッパにいた『血族』最大の隠れ蓑がユダヤ人だった……それで起きたのがユダヤ人大虐殺よ」
絶句。凄すぎた。
「で、でも、実際は……」
僕は真冬に言おうとする。
「うん……実際には『世界の逆転』は起こらなかった。」
真冬先輩は膝を抱え込むようして、俯き加減に言った。
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