理由と力と星空

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「今でこそ世界中に散らばる『血族』のことを把握しているけど、当時は違うところに住む『血族』と『血族』通しはほとんど交流が無かったの。ユダヤ人といっても全てが『血族』じゃないし、ユダヤ人を隠れ蓑にしていた『血族』の多くは『カルマ』が失われるかも知れない危機を知り、アメリカに亡命したりした。有名なのがアインシュタインだね」 「つまり、実際にアウシュビッツで虐殺されたのは『血族』じゃなくて純ユダヤ人だと?」 「そう、後は《世界の逆転》に失敗したヒトラーの歩んだ道のりは教科書通り、アメリカとソ連によって首都ベルリンは陥落し、ヒトラーは自殺、1945年の5月にドイツは無条件降伏した」 歴史が特に秀でているワケではない僕の頭はパンク寸前だった。 処理能力が追いつかない。誰か新たなOSをインストールしてください。いや、マジで。 「そして戦後は『血族』にとって大きな変化点となった。」 真冬先輩の声は氷のように冷たく、ガラスのように無機質で鋭かった。 驚いて先輩を見ると、膝を抱え込むような姿勢はそのままだったが、その横顔は一切の感情を無くしてしまったみたいに、無表情で冷たかった。 「再び《世界の逆転》の危機が訪れるのを回避する為に、人間が生まれて以来、世界各地に散らばっていた『血族』を把握する必要性が強まった。そこでアメリカにいた『血族』が中心となり、再び統一がなされ、新たな『血族の掟』が定められた。そして……」 僕の額に嫌な汗が流れる。 恐らくそれが、真冬先輩の……
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