理由と力と星空

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「新たな『血族の掟』では再びの反乱を防ぐ為、ゼウスの直系の子孫、つまりはゼウスの血をひいているヒトラーの家系の衣食住は監視管理されるように定められた」 真冬先輩の声に僕は息を呑む。 「ヒドいモノだよ……24時間、四六時中誰かに見張られて過ごし、ファッションなんか一つも出来ず、衣服も食事も全て誰かに管理される。もちろん好きな人と恋愛する事も許されず、決められた相手と結婚しなくてならない……普通の血族の場合でも血族以外とは結婚することはできないけどね」 自嘲気味に言った真冬先輩の声に、僕の脳裏に一つの予想がよぎった。 「もしかして先輩は……」 真冬先輩と視線がぶつかる。 「そう……私はヒトラーの孫、ゼウスの直系よ」 真冬先輩は言った。思い出したくない記憶を思い出したみたいに辛く、哀しげな声。 「先輩が……ヒトラーの…孫?」 「うん……」 真冬先輩は小さく頷いた。 「って事は……さっき真冬先輩が言っていた衣食住管理されてたって事は本当なんですね……?」 「………うん」 真冬先輩は膝を抱え込むように回した腕の中に顔をうずめた。 「私の両親はね……母がヒトラーの娘だったから決められた結婚相手がいたんだけど、二人は血族の掟に背いて駆け落ちしたの。それから血族の追跡を逃れて各地を転々と放浪の旅をして、私が生まれた。でも……」 声が震えていた。 「わ…私が4歳の時、父の…故郷だった日本に…来たんだけど、そ…その時二人は捕まって…掟に背いたとして………殺された」 震えていた声はいつしか嗚咽へと変わっていた。 「わ、私は、ヒトラーの孫、反逆者の娘ということで、ほ、ほとんど人間扱いされなかった!!監禁され監視され、罵倒され蔑まれ、血族はことあるごとに私を忌み嫌ったっ!!幼い私は石をぶつけられ容赦なく殴られ骨が折れるまで蹴飛ばされたっ!!私は人間でも血族でもなかった……犬以下の生活、そんな日々が二年も続いた」 負の感情全てを吐き出すように、真冬先輩は言った。
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