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「んじゃ、まだ時間あるし、秋山………ん、作戦内容を再確認するぞ」
ササメさんは袈裟の懐から、やけに萎れたタバコとジッポのライターを趣に取り出し、火を付けながら言った。
「は、はい」
断続的に聞こえる銃撃音に、僕は緊張気味に頷く。
「昨日、真冬が奴らの擬似乱数暗号を解いてくれたおかげでわかったんだが、敵は丁度今朝6:00に、ここから5キロ離れた廃ビルーーーーー以前流しておいた俺らの嘘の居所に一斉攻撃を仕掛けるらしい、てか現在進行形だな……ちっ、クッソタレが……昨日の雨でタバコがしけてやがる」
ササメさんは萎れたタバコに悪態付きながら言った。
てか、擬似乱数ってなんだ!?しかもそんな凄そうなのを昨日の内に解くとか真冬先輩は何者なんだ!?
んでだ、とホロ苦い香りの紫煙を吹き出し、ササメさんは続ける。
「攻撃に参加している敵の兵力はおおよそ九十名。んで、まずソイツらを桜花達がタコ殴りにする。恐らく血族の、……裏切り者も兵力の九割近くがやられたら、敵の本陣、佐久間貿易国際センタービルに居座っていた重い腰をあげるハズだ。そしたら俺達のターンだ。自ら出陣した裏切り者に奇襲をかけ、真冬のオペレートで郊外に誘き出す。そしたら、お前の出番だ。『パンドラの箱』で裏切り者の『ゼウスの遺産』の能力を書き換えて、後は俺がけりを付ける」
ササメさんはタバコをくわえ、理解しているか確認するように、僕を横目で見た。
ササメさんと視線がぶつかり、僕は、ハッとあることに気付く。
その瞳が、真冬先輩が時折見せていた悲しげな瞳に重なって見えたのだ。
あぁ……そうか……。
そして僕は気付く。
ササメさんだって本当は戦いたくないのだと。
血族の裏切り者はーーーーーー真冬先輩の恩人で、ササメさん達の恩師なのだから。
「で、でも、大丈夫何ですか?」
僕は恐る恐る口を開く。
「あぁん?なにがだよ?主語を入れろ。主語を」
僕の声にいつも通りのササメさんの口調で答える。ササメさんの瞳からは、先ほどの悲しみの色は消え去り、熊でも睨み殺せそうなほど鋭い眼光が再び宿っていた。……なんとも複雑な心境だ、恐すぎる。
「お、桜花さん達ッスよ! 九十人対二人とかいくら何でも……それに誘い出すって……」
僕の言葉はササメさんの眼光に気圧され、尻切れトンボ状態となってしまった。
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