9人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ホント、お前って不思議な奴だな。秋山」
「なっ、なんスか?それ?」
いきなりの不思議っ子宣言に、僕は少し戸惑いながら答える。
「いや、なんつーか、お前ってさ。馬鹿だよな」
「はっ!?」
ちょっ!?次いでお前馬鹿だよな宣言ッスか!?
………………へこむ。頭を思いっきりぶん殴られて、頭の形が凹になったみたいな気分。言葉の暴力とは怖い。
「だって、フツーは無いぜ?いくら真冬が超絶美少女だからって、こんな御時世に死ぬかも知れない旅に出るわ、『ゼウスの遺産』を信じるわ、会ったばかりの俺らの話を信じるわ……ホント……」
ササメさんは僕の眼を見て、どこか遠くを懐かしむような声で言った。
「師匠にそっくりだな……たいして剣術も体術も強くないくせに、口が上手いワケでもないのに、誰も信じないような奴の話を無条件に信じたり、困っている奴を見たら、自らの危険も省みず助けにいったり……まったく、そっくりだよ、お前は。顔も、雰囲気も、どことなく師匠に似てるしな」
ササメさんは、また小さく微笑んだ。その笑みが、少し哀しげに見えたのは僕だけだろうか?
『ーーーーーーお願い~お願い~♪傷つかないで~♪私の心は~♪月に代わってお仕置きよ♪キラッ(輝)』
不意にインカムから桜花のふわっふわした声が流れ出した。
「はっ!?」
「ん、陽動作戦成功の合図だ……さて、行くぜ。秋山。気ぃ引き締めろよ」
間の抜けた声を漏らした僕に対して、ササメさんは大真面目な顔で言った。
成功の合図って……もっとこう、カッコいいのじゃないんですか?
ってか、いろいろ混じってるし……。
「歯ぁ食いしばれよっ!!あんまりしゃべると、舌噛み切るからなっ!!」
ササメさんはゴーグルを下げると、キック一発でエンジンをスタート、アクセルを吹かした。
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
そして僕の返事(悲鳴)を置き去りに、サイドカーはトップスピードで駐車場を飛び出して行った。
最初のコメントを投稿しよう!