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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
人生っていうのは、時に予想もつかないくらい、突拍子も無いことが起きたりする。
それが良きにしろ悪きにしろ、古来、人類はそれを神様の気紛れだったり、悪魔の悪戯だったり、天使の祝福だったりになぞらえてきた。
つまり、人にはどうすることもできないーーーーーー人智を超えた偶然に、必然性を持たせようしたのだ。
分からないモノは恐ろしい。人が闇を恐れるのは、その先に何があるのか分からないからだ。
そんな心理を「くだらん幻想だ」という人もいるかも知れない。全ての事柄は必然によってなりたっているのだと。
だとしたら、僕の目の前あるモノは必然なのか?
僕達はビルから三分ほど走ったところにある、国道の上にいた。
「……なんで……」
痺れた僕の脳味噌から、ようやく絞りだした言葉は、それだった。
「久しぶり、ササメ君、そして……ハルヒト」
声。
サイドカーの側車に包まれるようにして座った僕の視線の先には、こんなところにいるハズもない人が立っていた。
「なっ……なんで、なんで師匠がここにいるんですかっ!!」
となりでササメさんが叫んだ。
止まったサイドカーから二十メーターほど先に『その人』は、いた。
なめらかな黒髪に銀のフレームの眼鏡、年齢は四十近いはずだが、それより十は若く見える童顔。
華奢な体躯を包む真っ白なカッターシャツに、真新しい黒のスラックス。
腰には拳銃のホルスターと、鮮やかな紅の鞘に収められた一振りの刀が吊られており、大きくはだけたカッターシャツの胸元には、チェーンを通された翡翠の勾玉がネックレスのように揺れていた。
僕は『その人』のことを知っていた。よく知っていた。だって、『その人』は……
「なんで……ここにいるんだよ……ハルカゼ叔父さんっ!!」
僕は叫んだ。
そう、『その人』は僕が一歳の時に交通事故で両親が死に、孤児になった僕を引き取って育ててくれた人。
嬉しかった。
天災で死んだと思っていた。僕の唯一無二の肉親、僕の育ての親が生きていてくれたのだ。
嬉しくないワケがない。
だけど……
「お、叔父さんだとっ!?有り得ないっ!!だって、師匠は血族だ……」
ササメさんはかつてないほどに取り乱し、僕に言った。
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