-プロローグ-

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・・・・・・・・・・・・・・ この春、大学生になった俺は引越しの準備をしていた。 いつもの事ながら、昔の漫画を発見しては読みふけっていて大概は時間を無駄に過ごしている。 しかし何だ、高校を卒業した後の春休みを充実して過ごせただなんて言える人なんておよそ存在し得ないだろう。 そうしてダラダラと物の整理をしていく中で、とある写真を見つけた。 そいつはアルバムの片隅に、しかし一番の輝きを放つ笑顔で写っていた。 それに加えてあろうことか、どこか寂しげな表情を隠した、セーラー服の少女の隣でそんな顔をしているのだ。 当時俺は・・・小学5年だったか。 それから約8年も過ぎたのかと考えると意外に早く感じるが、それよりも彼女の「今」を気にした。 つまり8年も会っていないわけで、 ・・・・・・それで、 ・・・・・それで・・・。 ・・・・・。 ・・・。 ・・・ふいに、写真が濡れた。自分のせいだと気づくまでには時間はかからなかった。 その痕を隠すや否や、アルバムのページをめくると、似たような写真がそこ此処に在った。 まるでこの記憶から逃れることは不可能だとでも言うように、その俺は8年後のこの俺を見てくる。 そうして思い出したくも無い、いや正確にはついぞ忘れることの出来なかった記憶の一つ一つを、数々の写真がその時の情景を目に浮かばせるのだった。 ・・・・・・・・・・・・・・
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