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そんな部屋の中央に、この屋敷の主は座っていた。
これたま豪奢な椅子である。
背もたれの高さが人間二人分くらいありそうだった。
見るからに高価な椅子で、骨組み部分には金銀財宝が惜し気もなく使われている。
この部屋にふさわしい椅子である。
その椅子に深く腰掛けているのは、女性であった。
絹地に金糸で複雑な模様が描かれたドレスに身を包んでおり、年は二十代前半くらいだろう。
鋭角的な顔の輪郭が理知的な風貌を彼女に与えていたが、同時にどこか酷薄そうな印象も秘めていた。
女性は傍らのテーブルに置かれたシャンパングラスを手に取り、中の琥珀色の液体をゆっくりと嚥下した。
満足げに頷くと、白皙とは対象的に真っ赤な舌が唇を舐め、テーブルに置かれたボトルを自ら手で取り、グラスに中身を注いだ。
ちなみにそれはシャンパンのクリュッグである。
しかも最高級品であるクロ・デュ・メニルだ。
その一本が、下手すれば労働者の給料数ヶ月分に値するのだが、女性はそんなことには頓着せず、まるで水でも飲むかのように、あおっていた。
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