プロローグ 迫り狂る敵

5/13
前へ
/137ページ
次へ
「またあんたなの」 やってきた少女は、主の様子を尋ねた。 「えっと……もしかして怒ってるですか?」 「覚えてる? あたしが許可を出したらさっさと部屋に入れって、前にも言ったわよね?」 「え、それは……」 「言ったわよねぇ?」 「その……」 「言ったかどうか、あたしが聞いてるのよ! 答えなさい!」 「ごめんなさいです、覚えてないです」 「言ったに決まってんだろぉが、このウジ虫! 脳みそまでウジがわいてるんじゃねぇのか、グズ!てめぇあたしに何回同じことを言わせるつもりだよ!」 「ご、ごめんなさいです」 謝る少女。 しかし、この場合少女ばかりが責められるのも酷だろう。 確かに主は入室の許可を出していたかもしれない。 しかしそれは、部屋の中で頷いただけの話しである。 扉一枚隔てた相手にそれを察しろというのは、正直酷な話だ。 だが、そんな正論が通じる相手ではないということは、少女自身よくわかっていた。 彼女の主とはそういう人物なのだ。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加