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「…………私は…そういう人に……なれなかったから……」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん。幸人殿には関係ないよ~」
そう言いながら、委員長は無理な笑顔を作って、自分の席に戻っていってしまった。
……なんだったんだ? 今のは。
それから今日の授業の間、俺の頭にはその疑問で一杯だった。
○ ○
「蒼井さーん。少しいいですか?」
放課後。
気がつくと朝の疑問はどこかに行ってしまったようで、俺の気は先生の呼び出しの方に向いていた。
「なんです?」
「いえ、大した用ではないんです。少し早いんですけど、体育祭のことで話があるんです」
「あー…確か球技大会と一緒になってるやつですよね」
この学園の行事はそれぞれ普通のそれと規模が違う。
その一つの体育祭は、球技大会と体育祭の二つが二日間に渡って平行して行われ、毎年盛大に盛り上がるらしい。
「はい。蒼井さんはクラス代表なので、前もって概要は把握していただこうと思いまして」
「あ、はい。わかりました」
「そうですねぇ…。ここで話すには少し長くなりそうなので移動しましょう」
先生はそう提案して教壇を下りる。
荷物は……まぁまた戻ってくればいいか。
俺はそう判断し、手ぶらで教室を出ていく先生の後ろを追いかけた。
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