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4月12日。
「ふぁぁ……っ」
俺は大きな欠伸を漏らしながら、学校に続く道を歩いていた。
「もう…っ、お兄ちゃん、入学式なのにだらしがないよー?」
「んなこと言われてもなぁ…」
昨日は夜中までバカに付き合わされてたんだ。眠いわ眠いわ。
俺こと蒼井幸人は今日から晴れて高校生。
受験勉強のしがらみから逃れて、ようやく自由って感じだ。
「ほら、襟が曲がってるよ?」
「お、悪いな」
「もう~…そんなだと彼女もできないよ?」
「いいよ別に。作る気もないし」
「むぅーっ。なんかもったいないような…損してるような…」
隣で口を尖らせているのは、妹の夏菜。今日から晴れて中学三年生。これから受験勉強の苦しみに追いかけられると考えると胸が痛む。
ま、夏菜は心配ないか。頭いいし。可愛いし。
「じゃぁお兄ちゃん、夏菜はこっちだから」
「おぅ。気をつけてなー」
「お兄ちゃんも、ちゃんと学校に行くんだよ?」
「わかってるよ」
「じゃぁまたあとでね」
バイバイといった感じに手を振りながら夏菜は別の道に進んでいく。
さて、俺も真面目に向かうかな。時間もないし。
そう思いながら、俺は夏菜が行った道とは逆の道に歩き出した。
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