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そして、HRも終わり、あとは帰るだけとなる。
「さて、帰るか」
誰にでもなく呟いて、俺はほぼ空っぽのスクールバックを持つ。
「オーイ、幸人ー。帰ろうぜー」
「おぅ」
帰ろうとしたところに来た瀬山と一緒に教室を出る。
「いい天気だな」
「そうだな」
校門で少し立ち止まって景色を眺める。
空は青々と広がり、満開に咲く桜の淡い色が空の青と見事にマッチしていた。
「お前も女ばっかり撮ってないで、風景も撮れば人気が出るのにな」
「うるせぇよ」
本当にもったいないことをしている気がする。
こいつが真面目に写真を撮れば、いいとこまで行けると思うのに。
「ま、俺はやりたいようにやるさ。他人にどうこう言われてそれにしたがってたら、伸びるもんも伸びないしな」
「そういうもんか」
「そういうもんさ。じゃぁ俺は寄るとこあるからそろそろ行くよ」
「あぁ、じゃぁな」
瀬山は背中を向けて歩いていく。
瀬山が帰ってからしばらく、俺は校門でジッと何をするでもなく、立ち止まっていた。
春風に流される桜の花びらを見ながら。
「────ねぇ、君は神様っていると思う?」
「え…………?」
不意に聞こえた少女の声。
その声を聞いたとき、初めて地面に足が着いた気がした。
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