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「わぁぁ、綺麗……」
三日月に欠けた月が湖の水面に映しだし、反射した光がキュレイの体を照らす。
「……」
カイムは『お前のほうが綺麗だよ』なんて言葉が言いたくても言えなかった。素直になれない自分の気持ちを押し隠していたからだ。
「この砂浜さ、海みたいだね」
砂を一握り掴み、空中で離して風に流されていく光景を自分で創りだし、それを感慨に耽り眺めていた。
「こうやって、私の手から離れて行っちゃうのかな……」
キュレイは、小さい声で呟いた。悲しげな表情に変わったキュレイをカイムは心配そうに声をかけた。
「……どうした?」
普段のキュレイからは想像できないか細い声で、胸の内を明かした。
「これからどんどん戦いが激しくなっていって、怪我をする人が増えるよね。怪我だけじゃなくて……死んじゃう人も出て来るんだよね。この騎士団が大きくなったら、戦死者の人達を数で数えちゃうようになっちゃうのかな?私……そんな風になりたくないよ」
キュレイは泣き出してしまった。カイムは黙って抱きしめた。ゆっくりと優しく包み込むように。
「大丈夫。そんな事にはならない。もしそんな風になりそうになったら、俺が間違いを指摘して直してやる」
キュレイはカイムの背中を抱きしめ返した。
「これからもずっと一緒にいてくれる?」
涙で潤んだ瞳でカイムを見詰める。女の子の特有の上目遣いでカイムに願いを請う。
「ああ。ずっと一緒にいる。俺は、キュレイが好きだ」
しっかりとキュレイの顔を、目を見て答えた。初めての告白。共に戦いの日々を乗り越えようと誓った、大切な日となった。
「私も好きだよ……カイム」
キュレイはゆっくりと瞼を閉じて、唇をカイムの唇へと背伸びをして近付けた。
カイムも瞼を閉じて、優しくキスをした。キュレイは涙を一筋流した。
「えへへ、やっとキスできたね?」
キュレイは涙を拭かずに、舌をちょっとだけだして、カイムにウィンクをした。
「なんだよ、別に俺は今までお前をそんな風には見てこなかったぞ」
「それはそれで悲しいなぁ。あ、ちょっとカイムこっち来て」
大きな樹の下に呼ばれたカイム。キュレイは、後ろを向いた。
「……ホントに私の事を大切に想っているならさ、後ろからも抱きしめてよ」
黙って言われた通りにした。
「こうされるのずっと夢に見てた」
キュレイはまた涙を流した。
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