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「さて、俺達は先に帰るぞ」
カイムは先程獲得した素材を麻の袋に詰めて、ルーを呼んだ。
「ちょっと待ってよー、団長さんに挨拶していかないと駄目なんだよ?」
面倒臭いと一言だけ言い放つとルーが代わりに挨拶しにいった。
「さて、今回も指揮官級の魔物は現れなかったな」
指揮官級というのはいわゆる魔物のボス的な存在のこと指す。カイムは討伐対象となっている劫龍“グレイドラゴン”と呼ばれる魔物を狙っていた。
「挨拶してきたよ。今回は二人で二千DDだってさ」
DDとはこの世界の通貨単位のドライダイトと呼ばれる硬貨である。ちなみに一回の掃討戦で貰えるDDは平均で二千DDである。
「そうか、じゃあ町に戻るぞ」
騎士団の町“カラムバラム”は今いる場所より東に位置し、歩いて一時間程度で着く所にある。
この後、カイムとルーは帰路の途中に運命な出会いをすることになる。
半分ぐらい歩いた時だっただろうか、ルーが口を開いた。
「ねぇねぇ、何時まで隠していくつもりなの?」
「その話はするな……」
「だってさぁその大剣使わないのはもったいないよ」
カイムの背中には白い布を丁寧に巻き付けてある大きな大剣がある。
「しかもあんな小さな騎士団だったからいいけどさ、もう少し歴史がある大きな騎士団だったらすぐに気付かれちゃうよ?」
「……その時はその時で考える」
カイムは徐に大剣を背中から外して前に持ってきた。そして白い布を外し始めた。
「久しぶりに見るね、崩龍剣=ルナティック・セイバー」
「この剣を出したのは一昨年の靖龍討伐戦以来だからな」
「その時からだよねカイムの通り名が龍殺しのカイムになったのって」
カイムとルーが思い出話に花を咲かせていると、前方から騎士団が進軍してきていた。
「あれは……見たことない騎士団だね」
ルーが背伸びをして右手を水平にし額に持ってくると遠くを見た。
「そうだな。いちいち絡むなよ、面倒臭いから」
ルーにしっかりと釘を差したうえでまた歩をカラムバラムへと向けて進めた。この時カイムは崩龍剣を布で巻くのを忘れてしまっていた。この一つの行為が、やがて世界の真実へと繋がるきっかけとなったのである。
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