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(絡むなって言われてもなぁ、つい気になると話し掛けちゃうんだよ)
ルーは自慢のクアールと呼ばれるコローパンサーの上位種から作り上げたクアールの弓を手入れしながら歩いていた。何か違うことに集中しないと前方から歩いて来る騎士団に目がいってしまうからである。
すると騎士団の団員が会話をしているのをカイムは聞くつもりは無かったがつい出来心で耳を傾けてしまった。
「そういやさついに始まるらしいぜ」
年齢でいうとカイムよりは若く、ルーよりは年上だろうと思われる少年が同年齢であろう背の少し高い少女に話し掛けていた。
「もしかして古龍討伐戦のこと?」
少女は優しい面持ちで少年に答えを返した。この二人はどうやら仲が良いほうなのだろうか。
「そうそう!しかも今回の古龍は六龍の一角、剛龍ディライグルだってさ」
剛龍ディライグルという言葉に反応してしまったカイムはつい声を荒げて少年に問い詰めてしまった。
「それは本当なのか!?」
少年の胸元をつい掴んでしまい、それに気付いたルーがすぐさま離すように説いた。
「カイム、何してるのさ!」
しまった、そう気付いたカイムは既に遅かった。少年はすぐにその場から少し離れ、少女がカイムの目の前に仁王立ちした。
「ちょっとあなた、いきなり何をするのですか?」
腰に差していた鉄製の剣を抜こうとしたとき、後ろから透明感のある女性の声が聞こえてきた。
「ジュリア、剣を抜くのは止めなさい。彼は貴方達を傷付けようとしている訳では無いわ」
銀色の鎧に身を包んだ美しい女性が姿を現した。露出は決して高くはないのだが、白い肌があらわになっており、左腕には騎士団の紋章を象った盾を装備して腰には細身のレイピアが差してあった。
「申し訳ありません。私の団員が御無礼な真似をしてしまい……」
短めの銀髪を靡かせ、軽く頭を下げると、ルーがいきなり絡んでしまった。
「君ってカイムと歳変わらないのに騎士団の団長なの!?」
一瞬、約二十人いる団員の中で一人だけカイムという名前に反応した者がいた。
「う、嘘だろ……その名前は……」
三十代後半だろうか、中性的な男性はルーの一言に覚えを感じ、カイムを見た。
「ど、どうしたのですかライジュさん?」
団長である女性はライジュと呼んだ男性を気にかけた。
「それにその大剣……忘れもしない、一昨年の討伐戦で劫龍を一人で殺した男……龍殺しのカイム」
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