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「あんな言い方して良かったの?」
ルーがまたかと言わんばかりの顔付きでカイムに聞いた。
「……実力が無いのに古龍に挑むなんて馬鹿げてる」
カイムは崩龍剣を白い布で巻き直して背中に背負った。
「じゃあ、何であの時は力を貸したのさ?」
ルーは急に立ち止まった。カイムもその言葉を聞いた瞬間、歩みを止めた。
「それは、まだ俺が何も知らない餓鬼だったからで……」
「違う!!」
声を荒げた。ルーは我慢の限界だった。
「どうしてあの時のように素直になれないのさ!君が力を貸すことで救われた人達がいたことを忘れたの!?」
「救われた人もいれば救われなかった人もいただろう!」
二人は言い合う。過去に起きたことを未だに清算出来ないでいるカイムに対していらついているルー。清算出来ずに引きずっていることを指摘するルーにいらついているカイム。
「何でそんなこと言うんだよ……キュイレは救えなかった人だったって言うのかよ!!」
キュイレ・サウィーラ、享年十五歳。二年前の劫龍討伐戦において戦死。最終職業、“春風騎士団団長”
「……もういい。俺は先に行く。当分二人での活動は止めよう」
カイムは必死に涙を堪えて歩き出した。ルーはまた叫んだ。
「そうやってまた一人になるのかよ。キュイレがそれを望んだの?」
その言葉には返答せずに、振り返らずにカイムは街を目指した。
「なんだよ……格好つけてんじゃねぇよ」
ルーはたった一粒の涙を流した。真っ赤な夕陽を見上げて、心の中でキュイレという少女に謝った。
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