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「やったね、カイム!」
金髪のショートヘアに軽装な碧い鎧。細身の剣に大きな女神を象った盾。
「そうだな。キュレイも良くやったよ。騎士団を結成して三年になるけど、オーガ種の上位種を倒せるのはそうそういないぜ」
オーガ種とは体力が非常に高く、しかも凶暴で力が強すぎるという出来れば相手にしたくない魔物である。実力がある騎士団でも避けるといわれている程の魔物だ。
「皆も腰が引けながらも良く戦ってくれたよね」
キュレイは団長として、オーガ種を倒せたことが誇らしかった。団員はキュレイとカイム、ルーを合わせても十数人にしかいない小規模な騎士団にも関わらずに戦い抜けたこと、村を救えた事が何よりの報酬だった。
「そうだよ。二人で前衛努めてくれたから良かったものの、他の人を纏めるの辛かったんだよ」
ルーは弓の手入れをしながら愚痴を漏らした。村から少し離れた所で野営地を設置し、焚火を焚いている。他の団員は疲れたのか、すでに寝静まっていた。
今日の戦いの反省点を熱心にキュレイはカイムに尋ねていた。カイムと同い年であるキュレイは、父の志を受け継いで騎士団を率いている。父から娘を頼まれているカイムは、キュレイの実力を向上させる為にも、戦いが終わるといつもこうして二人で反省会をしている。
「やっぱりオーガの攻撃を真っ正面で受けたのは……致命的だよね?」
しゅんとなったキュレイの頭を優しく撫でるカイム。
「そうだな。相手の攻撃が強力であればあるほど、人間特有の軽さを生かして避けなきゃ駄目だな。でも、その後の反撃は良かったぞ」
二人を見ていると、仲の良い兄妹を通り越して付き合いたての男女にしか見えない。
「カイムに褒められた!やったぁ、嬉しいよ」
キュレイに笑顔が零れた。するとキュレイは立ち上がり、カイムを見た。
「どうしたんだ?」
カイムが不思議そうにキュレイを見詰める。
「ねぇ、あっちに湖あるよ。さ、行こうよ?」
キュレイはカイムの手を握り、走りだした。キュレイの表情は恋する乙女の顔に変わっている。
「は、走んなくても良いだろ!」
「いいからいいから!」
照れている顔をカイムに見せたくないから走っているのだろうか。するとすぐに湖についてしまった。
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