銀色の空

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『ニルヴァーナ』という バンドをご存知だろうか?80年代から90年代にかけて活躍した、オルタナティブロックバンドだ。 彼らはブランヂと呼ばれる新たなるオルタナティブロックのジャンルを作り上げた。 今までのロックとはひと味もふた味も違ったロック。奇妙な歌詞や、急激なビートチェンジをする曲構成。 私は、一気に虜になった。だが、残念なことにニルヴァーナはヴォーカルの猟銃自殺により解散。 突如としてブランヂブームは幕を閉じた。 さてさて、私の手元には 彼らのアルバム『ネヴァーマインド』が握られているわけだが…。 「動くな」 只今、黒服の、いかにも喧嘩の強そうな男に銃を向けられている。 右手にアルバムを持ったままの姿勢のまま静かに 両手を頭で組むように指示され、素直に従う。 「このアルバムだけは傷つけないでね」 「知るか」 「音楽は私の命と同等なんだよ」 「貴様、今は自分の身の危険を感じることだな」 銃口を軽くつき出す。 距離にしておよそ二メートル。 反射でとっさに引き金を引くのに0.5秒。 少しのブレでは確実に負傷してしまう。 どうする? 「時間だ。言い残すことはないか?」 少し余裕ぶった口調に 憤りを感じたが、まぁ 落ち着こう。 戦場では焦った奴から死んでいく。 「じゃ、最後に……」 右手に握られたアルバムをチラリと傾け、街灯の光を反射させる。 「くっ!」 すぐさま、男に詰め寄り、深く沈み込んでからの 回転蹴りをお見舞いする。 「……ぐはっ!」 男は膝を折り曲げ、その場に崩れた。 「形勢逆転ね」 こぼれおとした銃を拾い上げ、男に突きつける。 「………」 黙ったままで口を開かない。 よっぽど訓練されてるのだと、心から思う。 死の淵に立たされて尚平静でいられる、この男の 過酷な過去を想像してみると少し申し訳ない気持ちに駆られたりもしたが、心を鬼にし振り払った。 「言い残すことは?」 「………」 尊敬する。 では、お別れの時間だ。 「バイバイ」 乾いた銃声が、冷たい夜空に吸い込まれるように消えていった。 殺しはこれだから嫌いだ。 さて、お目当ての少女の探索を再開しますか。
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