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駅前の喫茶店で待ち合わせて、そのまま30分間電車に揺られて、バスに乗り換えて更に20分間山道を上がる。
そこは、森に包まれた、寂れたプラネタリウムであった。
まるで、時代においていかれた映画館のようで、所々、蔦のようなものが張り付いている。
入口には小さな窓口があり、そこにはこれまた小さな老婆が座っていた。
「二枚」
それだけ告げると、友永(今思えば名前で呼んだことなかったな)は差し出されたチケットと引き換えに野口を二枚渡し、すたすたと館内へ姿を消した。
遅れぬように僕も従った。
館内は五つの段席
の列が並べられており、
天井には白い靄のような
ものが薄くかかっていた。室温は非常に低く、コンビニなどで当たり前と思い込まされた常識を覆している。
僕らは中央の席に腰掛け、僕は辺りを見渡し 他に客が来ていないかを確かめてみる。
いない。
まぁ、予想はしていた。
こんな山奥の秘境プラネタリウムに足を運ぶ物好きなど、そうはいないだろう。
始まるまでに少し時間がかかるようなので、用を足すために席を立つ。
友永は、じっー、と真綿の天井を見つめていた。
トイレも予想通りの汚さで、トイレットペーパーは抜き取られ、立ち込めるアンモニア臭に僕はそそくさと用を済ませ、
薄暗い渡り廊下に出た。
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