切なさは星屑と共に

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「3年……か」 亞坐観由香は静かに そう、呟いた。 生活感のない診療室と いうには語弊がある。 まず、誰一人として、 住んでいないし、これから先誰もここで暮らそうとも思わないだろう。 山奥の小さな診療所。 私はここの医師をしていた者だ。 三年前に犯したミスの 払い役として、再び この地を訪れたのであった。 小鳥たちは春の訪れを感じ、元気よく飛び回っている。 表に止めたカタナ(バイクの名前)のガソリンが 切れかかっていることに気づくのはもう少し 後に気づく事だ。 歩けば軋み、今にも 床が抜けるのではないか と思う。 薄暗い部屋に映える 純白のベット。 まるで、天国の階段のような神秘的な感じを 放っている。 少年は静かな寝顔で あった、端から見れば 普通に昼寝でも しているのだろうとも 思える。 脇には、花瓶と、一枚の 写真が立て掛けていた。 写真には少年と可愛らしい少女が写っていた。 少年が眠り初めて 3年が経つ、未だに 治療法が見つからない。 少年には妹がいるらしいが、彼女はこの事を 知っているのだろうか? 生き別れの兄がいたなんて、想像できるものだろうか? 妹さんは世界を飛び回る 両親と共に暮らしているそうだ。 ……夢…~~ちゃんだったったけかな。 記憶の隅から精一杯の 努力で引き出そうとするが、うまく思い出せない。 そろそろ、待ち合わせの時間だ。 来訪者を待つとしよう、と思い買ってきた缶珈琲をコンビニ袋から一本取り出す。 一日中飲み続けても 無くならないくらい 袋にはギッシリ缶珈琲が 詰まっていた。 キィィイイ!!! 古びた扉が開く音が 室内を響き渡る。 「久し振りだね」 「こちらこそ」 「何年ぶりかな……水無月さん、ほんとに久し振りだね」
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