0人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
幻想的な時間は
夢のように過ぎた。
気づけば僕らは
本物の星空の下にいた。
「今日は楽しかったな」
「そう……だね」
何か友永の頬が赤らんでいるように見える。
「ありがと」
「ん?何か言ったか?」
!
居なかった。
友永は居なかった。
「ん?これは……」
可愛らしい猫の柄の
便箋が落ちてあった。
拾い上げ、差出人を
確認すると……
「……友永」
中には一枚の手紙が
入っていた。
『ありがとう。私を見つけてくれて。本当にありがとう。大好き。そして、さようなら――』
涙。
理由なんて分からないくらいに、僕は少女の事が好きだった。
それだけ、ただそれだけの事が切なく、悲しかった。
ひとりぼっち、星空の元で、ひとりぼっち。
涙の後の幸せなんかはたぶん、訪れないだろう。
永遠に………
いない少女はいなくなった。
いたことも全ていなくなった。
でも、幸せだった。
――ありがとう、遊くん。
「なんだっけなこの手紙」「うにー、黒やぎさんからのお手紙かな?」
「なわけねーよ」
机の隅っこにおいてあった、誰からもらったか
記憶にない手紙。
「うわー、これラブレターってやつだよね!!」
「返せコラ!」
いずれ思い出すのだろう。
記憶のない記憶を。
一章Fin.
最初のコメントを投稿しよう!