九月六日

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「さすが死神だ……」 瓦礫からは手が生えてきた。 それは黒く覆われた手袋だった。 「ハハ。しぶといな兄ちゃん」 その声から狐面だと理解する。 生えてきた手を静かに掴み思い切り引っ張る。 「海岸さんは?」 出てきたの目に焼き付いている狐面の姿だ。 「さぁな、死体を確認してぇが正直あれで死ぬなんざありえないだろ?」 「ああ。あれで死ぬ人じゃない。恐らく今日はひいてくれくれたんだろう」 服に着いている砂埃をはらいながら悠長に答える。 「で、どうするつもりだよ兄ちゃん」 「ん?」 「もうおっさんもいないんだ逃げなきゃヤバくないか?」 「いや、もう一つ俺には仕事が残ってる。というかそっちが本題なんだが」 なんだよ。と聞こうとした瞬間のことである。 トオマの上に騒がしい音が鳴り始めた。 それはプロペラが高速に回転する音だった。
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