436人が本棚に入れています
本棚に追加
パーカーをはずすと襟足で二つに別れているツインテールが見えた。
ゴムが緩んでだんだん下がってきている。
僕は一度ゴムをとって先輩の綺麗な髪の毛を束に集め、また結び直す。
「あれ?ゴムとれた?」
「大丈夫ですよ。僕が直すんで先輩は集中してください」
部屋には僕と先輩だけ。つまり部員は僕と先輩だけだ。
「なんの事件ですか?」
「リストカット事件」
リストカット事件とは最近巷で話題の殺人事件である。
内容はなんとも酷く、両手首から先を綺麗に凶器で斬られている。
被害者計6名は無残にも手首を斬られ死亡している。
猫の手も借りたいどこか、蚊の血も借りたいほどだろう。
「それだと血液型が違ってたら死んじゃうよ?」
「あれ?なんか言いました僕?」
「思いっきりね」
またやってしまった。
「もう一種の病気だよねそれ。ここで見てもらったら?」
このやり取りもすでに慣れている僕は会話に触れず話を進める。
「被害者は六人でしたっけ?」
「スルーいっちょ入りまーす。というか七人ね!」
凶器は未だにわかっていない。
この情報は先ほども出たが海岸さんからのネタである。
海岸さんというのは警察関係の三十路過ぎの独身の人で捜査が息詰まる度に先輩を頼りに尋ねるのだ。
あの人、刑事ドラマを見て捜査班に入りたいだなんて……。志望動機がそれでよく受かったよな。
で、何故こんなにもその海岸さんが先輩を頼るのかというと
「そうだ先輩。速く終わらないと架け橋が出てきますよ?」
最初のコメントを投稿しよう!