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家を出る時に啓さんに会った。
「立川君て潤のクラスメイトの子だよね?」
「はい。そのことで今沙油が怖がっててこれから様子を見てきます。もしかしたら泊まるかもしれませんから」
「そっか……。わかった。それじゃあちゃんと守ってあげるんだよ。気をつけてね。瀬名には僕から言っておくから」
お願いします。と一礼してから家を出た。
外は真っ暗で商店街の灯りは全て消えている。
店のシャッターは下ろされており誰も入れないようにガードは怠っていない。
ただひとつ目の前の花屋だけが不自然にシャッターが開いていた。
入り口に向かうとパジャマ姿の沙油がいるのが見えた。
「大丈夫か?」
「まあ、大丈夫……かな」
あきらかに大丈夫ではない。
「とりあえず私の部屋に来て……。
母さんどっかに出掛けちゃってて……」
まさかこんな一般男性にとって最高の状態が完成されているなんて……。
これがもう少し真っ当なストーリーとして進んでくれれば嬉しかったんだけどな。
無言のまま何も言わず、語らず
沙油の部屋へと歩いていく。
誰もいない家に物音は存在しない。
踏みしめる床がギチギチと歪なハーモニーになっている。
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