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沙柚は僕の首筋に顔を近づけて来る。
吐息は暖かく、湿った空気が当たる。
耳元に聞こえる微かな声は高校生男児には刺激が強すぎた。
そんな気分も終わりを迎える。
沙柚が僕の首筋に噛み付いたのだ。
血が流れていくのがわかる。
ゴクゴクと沙柚の喉に血が通っていく音がする。
『吸血』
それが真っ当な人間である彼女。
炉是沙柚(ロゼ サユ)にとって唯一の異常である。
異常のために得た真っ当。
結局……この世には真っ当なんてことはない。
真っ当であること。
それがあること事態が歪んでるんだ。
真っ当なのに歪んでるか……。
皮肉だよな。
そうさ。そうさ。
歪んでるのさ全部。
僕自身が最大最高に歪んだ一級品だ。
その周りが歪んでないわけがない。
歪んでるよ。
歪みきってる。
歪んで歪んで歪んで歪ん歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで歪んで
それがもう真っ直ぐなんじゃないかって、真っ当なんじゃないかって
勘違いしてしまいそうなほどに
歪んでやがる。
「歪んでるよ……」
血が抜かれ過ぎたせいか、頭がボーっとして意識が遠くなってきた。
おいおい沙柚さん。吸いすぎだって。
揺れる眩しい蛍光灯を眺めていた僕の瞳は強制的に暗闇の世界に落とされたのだ。
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