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「だって、その人を殺したのは君じゃないだろ?」
僕はアクビをして、背を向けながらそう言った。
「ふうん……。なんでそう思った?」
どうやら愉快だったらしく、少年はさらに僕に質問を繰り返す。
「その死体は両手がスッパリ綺麗に斬れてる。間違いなく犯人はリストカット事件の犯人だ。だけど君の凶器はそのナイフだろ?ナイフだけで大の大人の両手をそんなに綺麗に斬れるとは思わない」
僕は振り返り、両手のなくなっている死体に指を指す。
「できるかもしれないぜ?」
「だとしても、その死体にある無数の刺し傷が何よりもあり得ないのさ」
少年は首を軽く傾ける。
「先に刺してから手首を斬ったのかもしれないぜ?」
「それだと意味がないのさ……。犯人は殺し方にこだわりがあるからね……。犯人は殺す際に決して両手以外に外傷は与えないんだ」
「ははっ。まるで犯人の気持ちがわかってるみたいな言い方だな。まさかとは思うけど、オマエが犯人なんじゃねぇか?」
「…………」
少年はしまったナイフを取り出す。
「その通り。コイツを殺したのは俺じゃない。殺したのは別だ。本当はその犯人を殺したかったんだが……俺が来た時にはもういなくてさ。イライラしてたら死体に八つ当たりしちまってたのさ。んでこれがその時の血な?」
ナイフを死体の服で綺麗に拭き取り、
また元に戻す。
束ねた髪を解き手ぐしで整える。
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