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「ん?なんだよオマエってそういうのにイチイチ情が湧く派?」
「世の中にそんな区別をつけてるのは君くらいだと思うよ。湧くとか湧かないとか、そういうんじゃなくて敬意を持ってるのさ」
「なんでだよ?だってただの『モノ』だぜ?」
トオマにとってこれは『モノ』らしい。
まあ、僕も似たようなモノだが。
「そうだね。これは『モノ』だ。
でも、ただの『モノ』じゃない。
『形あるモノ』だ」
トオマは興味があるのかないのか、
よくわからない態度で僕を見ている。
僕は死体を見ながらトオマに説明を続ける。
「この世には感情ってものがある。
少年漫画よろしく『勇気』とか『信頼』とか『友情』とか『愛情』とか『希望』とかってやつ。そんなのって結局眼に見えない『モノ』だろ?それらはどう考えたって、見ようとしたって『形ないモノ』でしかない。
だけどコレは違う。『形あるモノ』だ。
どう考えなくっても、見ようとしなくてもそこに必ず『アル』。現実。現象。現在。そこに存在を成している。僕と君のような不確かな存在じゃなくてね」
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