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「僕にそんな趣味はない」
僕は言い切ってみせる。
「これはなんの真似だ沙油。できれば僕が納得できるように説明してくれ」
沙油は急に顔が無表情になる。
「潤君。昨日夜中に外に出てたでしょ?」
沙油は顔を一気に近づける。
唇を少し伸ばせば当たる距離。
だがそんなことを考えさせるような状況ではなく。
僕は沙油の目と向き合う。
「ああ。お散歩がてらにそこらを回ってたよ」
「殺人鬼がいるこんな時に?」
その殺人鬼を捜してたんだけどね……。
「潤君は気づいてないと思うけど……。
血の匂いがプンプンするんだよ……」
「…………」
「それに……もう一人、なんか危ない人の匂いもね」
沙油は僕の胸元に手を当て、首から耳まで
鼻先でなぞるように匂いを嗅いでいく。
「潤君またなんか危ないことに関わってる?もしくは関わろうとしてるのかな?」
僕は何も答えない。
ゆっくりと沙油は僕の首に巻きつくように抱きしめる。
「もし……潤君が死んだら……私、きっといっぱい人を殺しちゃうよ?」
怖いことを言い出した。
「沙油は優しいな」
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