九月六日

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部屋中は少し広がりある所だ。 以前は社長室だったのか、それらしい机と椅子がある。 部屋の電気はつかなくなっているため 男はポケットから携帯を取り出した。 写真の機能のライトをオンにし、 辺りを小さく照らした。 そこで見たのは、 「う、……あう……あ。…………」 死体。 死体。 死体。 ゴロゴロとマネキンのように壁に横たわる者もいれば床に仰向けになっている者もいる。 「せん……ぱい?先輩!?」 血だらけ、傷だらけのそれは生前 男の上司である男達であった。 しかし、それはもう物でしかなくなった。 光がない眼は生命の停止を物語っている。 彼は別段、先輩と仲が良いというわけではない。 仕事上での上と下の、ただそれだけの関係なのである。 しかし、生きて欲しかった。 誰も生きてはいないだろうこの状況の中でも、一人、一人だけでも。 「うああああああああ!!」
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