一章

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 上臣は背後に立っていたメイド、もといアンドロイドに殴られていた。殴られて反省したのか肩を落とすと、モニタに向いて画面を弄び始める。おそらく、自習課題に取り組んでいるのだろう。継人はそれを見て静かに溜息を吐くと、目立たないように視線だけで周囲をうかがう。  自習課題に懸命に取りかかる生徒、先ほどの継人同様惰眠を貪る生徒と、皆が皆それぞれ自分がやりたい事をやっている。  しかし、そんな生徒たちにも少ないながらも共通点が合った。それは皆が同じ制服を着ていると言う至極当然の事も含まれているが、その最もたるものがアンドロイドの存在だ。アンドロイドは継人以外の全ての生徒に付いており、そのサポートに興じている。継人にアンドロイドが付いていない事には特に理由もなく、継人自身がそう言ったものに興味がない、ただそれだけ。だがしかし、継人も男である。アンドロイドは特性上マスターが好む容姿に作製されるため、その外見は全てのアンドロイドが麗しい。興味がないと言うだけで切り捨てるのももったいない気がした。 (一人暮らしにとって、家事をしてくれる存在はありがたいよな……………)  自分自身にも言い訳をする。継人の中では既に、放課後にマスターの登録をするのは決定事項だった。  上手くまとまった所で再度襲ってくる睡魔に身を任せ惰眠を貪ろうと思った継人だが、流石にアンドロイドの予備知識がほぼ皆無な状況でマスター登録に行くわけにはいかず、眠気を無理やり振り払い机ではなく自身の携帯のモニタを操作する。
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