一章

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 昔は授業が終わってもホームルームと言うものがあり、短いながらも生徒たちは帰宅する事なく束縛されていた。しかし、今は個人の端末に翌日の予定や時制が送信されるため、その制度は廃れて消えた。昔は面倒だったんだなとのんきに考える継人だが、即座に高校はもちろん、大学まで義務教育となった今の方が面倒だと考えを改める。実際は比べるのが馬鹿らしいほど今の方が便利な世の中ではあるが、残念ながら継人はまだ目先の利益を優先する若者だ。そこまで深くは考えなかった。 「そういえば、マスターの登録ってどこでするんだ?」  継人は引きずられる事によって乱れた襟を整え、質問する。よくよく考えると、多少はアンドロイドの事を調べたが、その他の事については手付かずだ。丁度良い機会なので、いろいろな事について知っておこうと思う。 「官庁だよ、官庁」 「…………は?」  上臣が言っている事が理解出来ず、継人は思わず呆ける。継人の記憶が正しければ、アンドロイドは名称不明の団体が作った技術による物であり、その技術は独占されているため国に入る余地はないはずだ。だが、上臣曰くマスターの登録は官庁で行われるらしい。継人はそれを疑問に思いつつ心中で首を傾げる。 「アンドロイドの作製って国営なのか?」 「いや、援助しているだけ。アンドロイドがいると、国もいろいろと助かるらしい」
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