【名も無き男】

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彼は名前が無かった。 常に目を閉じ、暗闇の中で生きていた。 それが当たり前で、気がつけばそうであった。 鳥の鳴き声で時間というモノを覚えた。 そこに何があるのか…不思議と分かる。 誰に教わったわけでもなく、誰かに導かれたわけでもなく、なぜか暗闇の視界は彼にとって光があるのと同じだった。 風が東から西へ…西から東へ…香りを運んでくれる。 空腹感はなく、ただ彼はそこに在る存在だった。
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