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「まっ、待ってっ…、」
前を駆ける泥棒男は、狙ったように街の人込みの中へ入っていった。
人に押され、じわじわと男との距離が離れていく。
「ちょっ…、かっ、返してっ…!お願っ――うわっ!」
すれ違う人の足に引っ掛かり、ティナは道の真ん中ですっころんでしまった。
「…ってて…。あっ…」
慌てて身体を起こしたが、…男の姿はなくなっていた。
「…………嘘…。」
へなりと力が抜けたようにその場に座り込んだ為、嫌な顔をする人もいたが、ショックが大きすぎて気にならなかった。
…………ふと、思い浮かんだ人の影。
「………っ。」
半年前に、突然声をかけてきた――――。
「クー……さん…。」
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