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「おら、信二行くぞ。これ以上こいつと関わるな。縁、切っちまえ」
「先輩…それは……」
哲郎は信二の夕羅に対する気持ちに気付いていた。だからこそ、目を覚まさせてやらなければならない。
信二の真っ直ぐで優しい所を歪めさせないためにも。
「それはありがたいね。何かとトラブルを持ち込んできて迷惑してたから。せいせいする」
満面の笑みを浮かべる夕羅に、信二の心が締め付けられる。
力が抜けて、引きずられるように部屋を出た。
こんなつもりじゃなかった。今までのように協力して、一緒に解決に取り組もうと思っていたのに。
やっぱりみんなを連れて来るべきじゃなかったのか。
それとも避けられない衝突だったのか。
全員が出て行ったあと、夕羅は一人残される。
「……心…………それでも人間か…ね……」
ポツリと漏らした独り言を聞いた者は誰もいなかった。
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