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「あー!2人ともみーっけ!!」
それからしばらくして、勇くんの明るい声が響いた。
「なんだ、見つかっちゃったか」
わざとらしく肩を落とすと沖田さんは勇くんの頭を撫でる。
「勇坊、もう今日はこれでおしまい。さぁ、ご飯の時間だよ」
「うん!」
こくりと素直に頷くと勇くんは私たちに手を振って家の中へと入っていった。
「千昌ちゃん」
「はい?」
不意に名前を呼ばれ沖田さんへと目線を移す。
「明日、巡察が終わったら一緒に町へ行ってみない?」
「町に、ですか?」
あの日以来、屯所から出ていないのを思い出す。
殺されかけていたところを沖田さんたちが助けてくれたあの日から。
けれど、まだ少し京の町は怖い。
「…っ、あの」
「大丈夫、千昌ちゃんは僕が守るよ」
その言葉にはっとして顔を上げると目が合った。
「どうして…」
私が言葉を溢すと、沖田さんはただただ優しく笑っていた。
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