0人が本棚に入れています
本棚に追加
情報を、整理しよう。
ココは電脳世界(オンライン)。
『パラダイス・リアル』というゲームの、フィールドの森の部分。
このゲームは、現実の世界からプレイヤー自身がログインして冒険するという、新しい試みのもと制作されたもの。
未だ完成ではないが、今回試験的にプレイヤーをログインさせてみることになったのだという。
それが、ラズだというのだ。
「じゃあ……ここにいるのは、精神だけってこと?」
「そういうことだ。察しがいいな」
現実世界(オフライン)と電脳世界(オンライン)。
行き来するのに、生身の身体は使えない。
そこで開発されたのが、プレイヤーの身体を強制的に眠らせ、脳波に特殊な電波を当てることによって、精神を電脳世界に結ぶというシステムだ。
正直、よくわからない。
淡々としたイェルチの説明を受けながら、ラズは段々落ち着いてきている自分を感じていた。
「――というわけで、ココにいるラズは現実世界の精神を電脳世界に繋ぎ、グラフィックとして表したもの」
「いわば夢のようなもの、ってことか」
「そうだ。肉体は現実世界で眠っている」
夢だとわかれば、途端に気分が軽くなった。
夢だと断言される夢も珍しいだろうが、とにかくこれは夢なのだ。
ならば、知っているようで知らない奇妙な違和感も、自分のことすらよく思い出せないことも、気にしなくていい。
夢から覚めたら、全て問題ないのだから。
「ただ、問題はある」
心を軽くしたラズに、イェルチは抑揚なく告げた。
最初のコメントを投稿しよう!