序章

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 正確な表現をするならば、暇ではないが何事にも意欲が湧かない、となるだろう。  やる気がない、というのは、現代の少年少女にとっては付き纏う課題だと思う。  既に今、自分達が過ごしている少年時代を過ごした大人達から見れば、無駄な時間を過ごしている、等の叱責を頂く事になるだろう。  だが、自分はそうは思わない。大人達にも無駄な時間を過した筈だし、恐らくは、無駄な時間さえも良き経験になるのだ、と。 「と、俺はそんな言い訳をしてみたい……」  春先の大気に零した呟きは、そんな自分の考えをあやす様にさざめいた風によって吹き流されていく。  だはー、と追加で大きく息を吐き、齎されたのは酸欠と脱力感。  適度な気の緩みと温かな大気のお蔭で、今は十分に眠気がある。  と、そこまで考えてから重心を後ろに倒した。 「ぅあ゛ー……」  後頭部の落下地点には潰れた皮鞄を置いてあるので問題ない。  柔らかに自分の頭を包んでくれた鞄に感謝しつつ、大きく伸びをする。 「あ゛ー……春って良いなぁ……」  先程の思考が馬鹿に思えるほど柔かな空気は、高台にあるこの場所では良き空調機だ。
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